北山大奈 著
ISBN 978-4-938866-49-5
四六判 237ページ
統合失調症の患者さんは、思いがけない発言や行動をすることがある。そのため、不可解な人であると思われがちであり、周囲もとまどいがちである。しかし、その素地にあるものを理解するなら、謎の病気と考えるのは偏見であることがわかる。主治医の説明では物足りないと感じたときに読みたい1冊。
発病時期は定かでない/多彩な症状の由来は素因と生活体験から
発症前にはミスと勘違いが多くなる/自分の体調が分からない/他人には分からない自覚症状がある/体調の異常感に悩む/自分の行動も把握できない/自分の位置が分からない
相手のことが分からない/意味が分からない/人間関係の機微が分からない/自分本位の発言をする/曖昧な表現が多い/場違いな発言をする/期待に応えることが難しい/予測ができない
ことばでうまく伝えられない/身振りや表情でもうまく伝えられない/コミュニケーションの手段でない笑いを用いることがある/演技をするのが不得手である/セットアップが苦手なため段取りの悪い行動をとる
過敏な人のイメージは「気にする人」、「心配しすぎる人」/早い時期から過敏性が見られる
妄想の芽-困難に直面するたびに自分を見失う/妄想の芽-自分が受け入れられていないと考える/妄想の成長-相手に打ち勝とうとする/妄想の発展-自分探しの暴走が始まる/妄想が理屈を離れて一人歩きを始める/根拠が仮想であったことを忘れてしまう
幻聴が発生するまで/幻聴の内容は多彩である/幻聴は話しことばという形式の思考である/幻聴の発生と病状は必ずしも一致しない
緊張病症状(混乱状態)の出現までに起こっていること/緊張病症状(混乱状態)には昏迷状態と興奮状態がある/緊張病症状(混乱状態)の反復は病状を進行させる
自閉症状とは/億劫から始まる/住んでいる世界から逃げたくなる/自分に自信がなくなる/過敏性の苦痛から逃れようとする/口実を設けて人を避ける/疲れやすくエネルギーの消耗が大きい/目前の生活が重荷になり別の世界で再出発したくなる/自閉であっても人嫌いというわけではない
過剰な水の摂取/過食/不眠/尿もらし/アルコール依存症
大脳の新皮質の進化が統合失調症の素地をつくった/成長とともに認知活動も広がっていく/認知機能は三歳頃までにできあがる/ことばの発達が認知機能の発達を表す
認知は知覚から始まる/知覚情報は新皮質で記憶と照合される/妄想は資料を創出する新皮質の特性のためである
状況の変化・刺激を強く感じすぎる/強い信号に対する自己防衛が脳の発育に影響する/感覚器からの信号の意味に対しても過敏性が現れる/過敏性は生きてゆくうえで不可欠な素因である/統合失調症に発展する過敏性には特徴がある/言動が病的であるかどうかの評価の基準は曖昧である/過敏さにアンバランスがある
統合失調症にもとづく自殺/自殺を防ぐために
重症・軽症の意味/言動から重症度を測る/身辺処理の能力から重症度を測る
統合失調症という病名の由来/万人に共通する統合失調症の定義・概念はない/アメリカ精神医学会の提唱する診断基準(DSM-IV)/世界保健機関WHOの提唱する診断基準(ICD-10)